2017年02月25日

食生活を豊かにするペプチド類

栄養以外の価値もある
  食品に由来しないで体内で作られるペプチド類の中で、いろいろな生理作用を示すものがあります。
 「グルタチオン」は3種のアミノ酸からなるペプチドで、肝臓内で有害な活性酸素を抑える抗酸化作用や解毒作用を示すので、単独に使われています。
 肉や魚肉のうまさは、屠殺直後では現れず、必ず熟成という段階を経て得られるものですが、これは肉のタンパク質を分解する酵素類によって自然に分解を始めた状態で、このときできた小さいペプチドやアミノ酸類がうまさの原因となるわけです。お酒、味噌、醤油などのうまさも同様に、これらの物質が貢献しているのです。
 甘味に対する嗜好性はエネルギーを求める人間の本能からくる強い要求によるものです。その一方では、砂糖の過剰摂取が肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすいことから、種々の甘味料が開発されています。
 この中で、アスパラギン酸とフェニルアラニンの2種のアミノ酸が結合したペプチドの「アスパルテーム」は、砂糖の200倍もの甘みがあることから、低カロリー食品として広く利用されています。
 このように栄養的にプラスの性質はないけれども、無害で食生活を豊かにする意味で評価されるペプチド類が、今後発見される可能性は非常に高いといえそうです。

アミノ酸よりペプチドの吸収性がよい
 タンパク質は、いろいろな消化酵素を使っても、酸で加熱したときと違って、完全には分解しません。
 消化管の中でも同様に、食べたタンパク質はその約半分位しかアミノ酸に分解せず、残り半分はアミノ酸が2個ないし3個結合したままのオリゴペプチドの状態で消化が終わってしまうのです。
 これらは小腸の組織に吸収されたのち、特定の酵素によって初めてアミノ酸になるという順序が必要です。
 消化吸収力の弱まっている病人などでは、タンパク質の消化物(ペプチド)のほうが、それと全く同じ組成のアミノ酸混合液よりも吸収利用性がよいことが知られています。なぜなら、小腸でアミノ酸を吸収する時、ある種のアミノ酸同士が吸収を妨害し合うからとされ、このことはオリゴペプチドの形で摂ったアミノ酸の利用性がよいことを意味します。

ペプチド輸液
  エレメンタルダイエットによる食餌療法(  頁)を実施するときの問題は、アミノ酸混合液ではどうしても味が悪くて、食欲がでないことです。ペプチドの形のほうが味の点でまさっているようですが、いまのところ生産コストが高いので実用化には時間がかかりそうです。
 ペプチド混合物を、さらに輸液として直接使おうという考えがあります。
 この「ペプチド輸液」は血中に入った後も、腎臓や肝臓にアミノ酸にまで完全に分解されることで、アミノ酸としての利用が可能であることが明らかにされています。
 現在、病人への栄養補給で盛んに使われている「アミノ酸輸液」ですが、浸透圧効果、すなわち外部から水を引き込むの
が欠点で、下痢などの副作用がおこりやすく、また水に溶けにくいアミノ酸などは添加の量に限度があります。
 その点、「ペプチド輸液」には、これらの問題がないので将来的な展望があります。



各種アミノ酸の働き
各種アミノ酸の働き


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2017年02月24日

新しいものと入れ替るターンオーバー

成分が元と全く同じタンパク質をつくる
 温泉の浴槽のお湯は常にひたひたと一杯で、見た目は溢れることも減ることもなく、いつも一定です。しかし表面的に何も変わってはいないように見えても、実は中身が常に新しいものと入れ替っています。
 この入れ替わりは人の体にも当てはめていうことができ、生命体の運命とでもいうべきもので、「ターンオーバー」と呼んでいます。
 体のタンパク質は例外なく、速いものでは数分間、遅いものでは数ヵ月かかって入れ替っています。なかには何年という長い寿命のタンパク質もあるようです。
 タンパク質のターンオーバーは、酵素によってアミノ酸の結合がばらばらになって分解してしまい、また新しいアミノ酸が順次結合して元と全く同じタンパク質を作ることを常に繰り返しているという現象です。新しいものを作るたびに、遺伝子による結合順序を表わす特定の鋳型が使われています。

加齢と共に合成バランスが崩れる
 老化とは、組織や細胞が古くなって劣化していくことです。細胞を構成する多くのタンパク質はターンオーバーによって新しいものと入れ替っていきますが、加齢にともない、体のタンパク質全体としてのターンオーバーは遅くなる傾向を示します。
 ターンオーバーが非常に遅いタンパク質では、加齢とともに新しい分子と入れ替る前に構造が劣化してしまうことが起こりやすくなります。この現象は、アミロイド物質に変化した脳内タンパク質によるアルツハイマー症やパーキンソン症の誘発、眼のレンズのタンパク質が劣化する老人性白内障など、多くの老化症状の形で現れます。
  ターンオーバーが変わるのは、アミノ酸から新しいタンパク質分子への合成の速さと、元の分子が分解してアミノ酸にばらばらになる速さとのバランスが崩れることによります。
 食事でタンパク質を摂らないと体重が減少してくるのは、このようなターンオーバーの変化によるものです。そんな時には筋肉の分解によるアミノ酸が、体の機能に重要な影響を与える器官や細胞のタンパク質を優先的に維持される方向に再利用されています。


各種アミノ酸の働き
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posted by ハートマン at 10:55 | 各種アミノ酸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月23日

家の「梁」に相当する「ヨコの結合」

アミノ酸の三次構造が多様な作用を
 タンパク質の基本構築は、ちょうど家の柱に相当する「縦」の構造となりますが、それだけでは不十分で、必ず柱と柱を連結する梁という「横」の構造によって強化されています。
 大多数のタンパク質の「縦」の構造は、アミノ酸が順次結合した、朝顔の蔓のように螺旋状になっています。しかしそれだけではフラフラして不安定なので、蔓の各所に存在するアミノ酸同士が相互にいろいろな力で引き合って「横」の構造をつくっているのです。

パーマのウエーブもアミノ酸結合の変化
 ところが横の結合は、縦の構造より、はるかに弱い性質なので、ある条件のもとでは切れてしまい、もとのタンパク質の構造が保てなくなる場合があります。
 例えば、毛髪のパーマネントは、ケラチンという毛のタンパク質の立体的な形を変えることでウエーブをかけているのです。
 ケラチンにはシステインという硫黄を含んだアミノ酸がところどころに結合していて、システインの硫黄原子同士が、「S―S結合」と呼ばれる弱い結合ながら横の強さを補強しているのですが、特殊な化学物質によって簡単に切断されたり再結合したりします。
 パーマ液中にこのような物質を加えることで、髪の毛に安定なウエーブをつけることができるわけです。
●折り畳みと、ほぐれ
 このようなタンパク質構造はさらに「折り畳まれて」いるのが普通で、細胞の中の、シャペロンという折り畳みを専門に扱う物質によって行なわれています。
 どんなタンパク質でも、新しく作られる時には、まず遺伝子の命令に従って次々にアミノ酸がつながっていき、基本的な構造をつくります。そして次の段階として、特定の立体的な形に折り畳まれていきます。
 この立体的な構造(三次構造)によって、タンパク質が多様な作用を表すことができるのです。

立体構造と結合の切断
 例えば、膵臓から分泌して、食べたタンパク質をアミノ酸やそれらが幾つかつながった状態のペプチドに分解する消化酵素トリプシンで説明してみましょう。
 トリプシンはそれ自身タンパク質ですが、消化という強力な作用をもつ物質が、なぜ同じタンパク質からなる膵臓を壊さないのでしょうか?
 トリプシンが腸管内で食べ物のタンパク質を消化している時、よく調べてみると、特定のアミノ酸が6個つながったペプチドが必ず発見されますが、これは酵素の一部が切れた断片であることがわかりました。
 すなわち、膵臓では、トリプシンの酵素作用をする部分は折り畳まれた構造の内部に深くしまい込まれていて、食べ物のタンパク質が接近できないため、不活性の状態(トリプシノゲン)となっているわけです。
 それが、腸内に分泌されると、すでに活性状態となっている他の酵素によってトリプシノゲンの末端部が切断されます。その結果、三次構造をつくっているアミノ酸の横の構造がほどけて酵素部分が表面に現れ、トリプシンとして作用を発揮することができるのです。
  急性膵炎というのは、突然トリプシンが活性化するため、放置すると膵臓が障害を受ける恐ろしい症状です。



各種アミノ酸の働き
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posted by ハートマン at 12:19 | 各種アミノ酸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする