2017年02月14日

臭いや黄褐色の問題も解消

活性炭で脱色する
 塩酸加水分解法絹粉末の欠点は、黄褐色を呈することと、アミノ酸の酸化分解に伴う悪臭です。脱色、脱臭は活性炭で処理し、真空パックすると防げますが、再び空気に触れると、色がつき臭いが出てきます。
 食品用にこの加水分解絹を使うとき、色はそれほど苦になりませんが、臭いは鼻つまみものです。色と臭いは一体なので脱色すれば臭いも消えます。しかし収量は半減してしまいます。すると価格も倍にはねあがります。
 脱色により脱落するアミノ酸はチロシンをはじめとして側鎖の長いアミノ酸です。すなわち必須アミノ酸と機能性アミノ酸の一部はなくなり、粉末の主体はグリシン、アラニン、セリンとなっています。二規定塩酸で四八時間加水分解した脱色粉末はアミノ酸が六割、オリゴペプチドが四割です。

「酵素法」で解決
 このオリゴペプチドは色も臭いもない白色粉末です。腸壁から吸収されるペプチドは五個体までなら難なく吸収されるといわれています。絹構成アミノ酸のほとんどを含む吸収性のよいオリゴペプチドが得られれば、色も臭いもない食品用絹粉末となります。
 そこで、オリゴペプチド作製に適した加水分解法として「酵素法」を取りあげたわけです。種々の酵素を検討した結果、タンパク質分解酵素アクチナーゼ(放線菌Streptomyces griseusの培養濾液から得られる)を用いることにしました。
 この酵素は魚肉蛋白の加水分解で用いられ、分子量二〇〇〜三〇〇位まで分解されます。なお良いことに、時間が経つと自己分解してしまうので除去する必要はありません。酵素加水分解方法は紙面の都合上、また細かい資料なので本書では割愛します。
 先ず絹溶液を作ります。一番簡単で低廉な方法は塩化カルシウム法です。屑絹を精錬したのち、細かく切り沸騰した塩化カルシウム飽和溶液に溶かします。これは今までの方法と同じです。冷えた頃を見計らって透析します。本来絹の分子量は35万ですが、塩化カルシウムで処理すると、およそ6万前後に落ちてしまいます。
 絹溶液濃度を約2%に調整し、絹重量の10%に相当する酵素を添加し、37℃で処理時間を変えて加水分解を行いました。分解後は速やかに煮沸し酵素を失活させます。 この分解物のゲル濾過の結果を図15に示します。子側からピークをA、B、C、Dとします。
 Aは分子量100前後、Bは約200、Cは400、Dは1500位の分子量を示しています。Dは加水分解時間が増すとCに集斂してきます。つぎにアミノ酸分析を行い、それぞれのピークを構成するペプチドを調べました。ピークAはチロシンが60%、グリシンとアラニンが10〜20%、他は微量ながら絹構成アミノ酸をほとんど含んでいました。
 ピークBにはジあるいはトリペプチドでN末端分析からGly・Ala・GlyかAla・Glyとなりかなり低いことから、その存在量も僅少です。
 ピークDも酵素処理時間が長くなると、ほとんど低分子側にシフトするので、ここではふれません。最も存在量の多いのはピークC(図16)です。グリシン、アラニン、セリンがほとんどで、そのモル比はおよそ3:2:1である。するとアミノ酸配列は、Gly-Ala-Gly-Ala-Gly-Serというペプチドが考えられます。ややセリンの少ないことから、C末端セリンはアラニンで置き代わっているかも知れません。

※図省略




血中コレステロール濃度、血糖値を抑制する効果
新発見 食べる絹


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2017年02月13日

血中アルコールを下げる

アルコール代謝に効果がある
 絹の成人病に対する効果を確かめるため動物実験を開始したのは、昭和六三年から平成二年にかけてのことです。
 まず、アルコールの代謝に効果があるか実験を行いました。左頁の表は、ラットの血液中のエタノール濃度を測定した結果です。絹加水分解物をエタノール投与前に与えたラットの血液中エタノール濃度は、無投与のラットにくらべ低い値を示し、アルコール代謝の効果のあることが分かりました。
 ところでエタノールの代謝は肝細胞において脱水素酵素により行われ、アセトアルデヒドとNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を生じます。このNADHが過剰になれば、エタノールやアセトアルデヒドの酸化が阻害され、悪酔いを起こします。

アラニンが分解サイクルを活性化
 この酸化過程が円滑に行われれば悪酔いはありません。この酸化過程を賦活するのが肝グリコーゲンです。肝グリコーゲンが過剰なアルコール代謝のために不足すると、アミノ酸からグリコーゲンへの転換が始まり、アラニンはこのような役割を持つアミノ酸の第一候補です。
 すなわち、アラニンはアルコールの代謝で生じたアセトアルデヒドやNADHを分解するサイクルを活性化するエネルギー源になるわけです。アラニンを三分の一近く含む絹が、エタノール大量投与に対し有効に作用するのはこのためです。

※表省略



血中コレステロール濃度、血糖値を抑制する効果
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2017年02月12日

急速に進んだ絹食品開発

シルクアミノ酸醤油?
 加悦町の場合は、屑糸は丹後地方にある機屋から集めました。これからごみや飾糸をとり除きます。次に裁断機により五  位に切断します。これを加悦町にある精練所でセリシン(フィブロインのまわりにあるタンパク質)を落とします。
 京都衛生試験所の検査によると、人体に有害な金属および有機物はセリシンに付着しており、これを除くとほとんど無害になることがわかりました。
 この精練絹を塩酸で加水分解し、水酸化ナトリウムで中和します。最初にできるのは「シルクアミノ酸醤油」です。谷口さんのお宅で肉うどんを作ってもらい食べたところ、市販の醤油味の肉うどんに比べ優るとも劣らないおいしいものでした。
 これを、持参してきた脱塩装置にかけアミノ酸溶液にし、エバポレーターで濃縮したのち、冷凍室で凍らせ、凍結乾燥します。できた粉末は黄褐色を呈し甘酸っぱい味がしました。おそらくこれは記念に加悦町に保存してあるはずです。

甘みの秘密はアミノ酸
 この甘い味は、絹を構成しているアミノ酸、グリシン、アラニン、セリンのためです。側鎖の短いアミノ酸は甘味を持っています。苦味のあるアミノ酸、うま味のあるアミノ酸もあります。
 その後、加悦町ではタンパク質を分解する会社と専属契約を結び大量に絹粉末製造に乗り出し、平成二年末には三トンにもおよぶ絹粉末を製造し、販売するに至りました。
 当初製造した絹粉末は乾燥過程で粉末の核にデキストリン(飴)を使いました。そのため三〇%におよぶデキストリンが混っています。最近では消費者の需要に応じ、液状および絹だけの粉末も作っています。
 その他、食品用絹粉末を中国から輸入している会社(日本レジャー開発)も那須町にあります。この粉末は中国無錫にある会社(社長・楊孝楚)が製造したものです。「イオン交換樹脂法」により黄色のアミノ酸は除去し、酸化防止のため真空パックにしてあります。白色粉末で味は加悦町のものと変わりません。
 アミノ酸まで分解しないペプチドのままだと色も臭いもありません。これは「酵素分解法」により行われますが、値段は張るようです。



血中コレステロール濃度、血糖値を抑制する効果
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posted by ハートマン at 10:42 | 食べる絹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月11日

食品化の第一歩は絹ゼリー

減少し続ける絹生産
 左頁の図を御覧ください。昭和五十年には三十数万俵の生糸を生産し、昭和四七年には生糸の消費も五十万俵を超えていました。外国産の生糸も十万俵近く輸入され、業界はシルクブームが再来したと喜んでいた時期です。
 ところが昭和四十年末に起きたオイルショックのあおりをうけ、昭和五十年代に入ると、安い輸入生糸の流入、和服離れ、シルキー合繊の参入等により、養蚕農家の意欲もなくなり産繭量は減り続け、五十年末には生糸生産も十万俵そこそこまで落ちてしまいました。

冷蔵庫を開けてみたら
 どうしたら日本での絹の生産を維持できるのか、関係者は日夜頭をしぼり考えていました。私もそのひとりです。
 昭和五八年の春先のことです。蚕の吐糸過程を調べるため延伸用絹フィルム(絹を原料としたフィルム)を作ろうとして、再生絹溶液(絹を溶媒で溶かし透析した後の絹溶液)を冷蔵庫に保存しておきました。
 ところが数日後に開けてみたところ、寒天状のゲルになっていました。これをみたとき、これを食べたら絹の用途拡大につながらないかとふと思ったわけです。

「繭の里」で試食
 さっそく食べてみました。色も臭いも味もない「絹ゼリー」でした。そこで今度は、再び絹溶液を作りオレンジ、グレープ、コーヒーで味つけ≠オ食べてみました。これが市販のゼリーに優るとも劣らない喉ごしのよいゼリーでした。これならいけるということになり絹の食品化の第一歩がはじまったわけです。
 栃木県那須町にある「繭の里博物館」開館の折に、この絹ゼリーを皆さんに試食してもらったところ、たいへん好評でした。

※図省略



血中コレステロール濃度、血糖値を抑制する効果
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posted by ハートマン at 15:36 | 食べる絹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする